knowledge ナレッジ
TAM・SAM・SOMとは?市場規模の考え方と違いを図解でわかりやすく解説
新規事業の立ち上げやスタートアップの資金調達で必ず問われるのが、「このビジネスは、どれだけの市場規模があるのか?」という問い。その答えを示すフレームワークが、TAM(タム)、SAM(サム)、SOM(ソム)です。
TAM・SAM・SOMは、単なる略語ではなく、事業のポテンシャルや収益の現実性を定量的に伝えるための戦略ツールです。
しかし、3つの違いや使い分けが曖昧なまま説明してしまうと、「規模は大きいけれど現実性がない」「狙いが不明瞭」といった印象を与えてしまい、説得力を失ってしまいます。
本記事では、TAM・SAM・SOMそれぞれの意味・違い・図解・計算方法・活用事例・注意点までを網羅し、戦略やピッチ資料にそのまま使える理解を目指して解説します。
Contents
TAM・SAM・SOMとは何か?3つの用語の意味と違い

TAM(タム)、SAM(サム)、SOM(ソム)とは、市場規模を三層構造で捉えるための概念です。
ビジネスの「可能性」と「現実性」を分けて整理できるため、戦略立案・投資判断・社内共有において不可欠な視点となります。
TAM(Total Addressable Market):市場全体の最大規模
TAMとは、「その商品やサービスが到達可能な全世界・全体市場の最大値」を指します。まだ未参入の領域も含め、理論上アプローチ可能な市場規模を表します。
■例:スキンケアD2Cブランドにおける「TAM」=世界中のスキンケア市場全体(数兆円規模)
SAM(Serviceable Available Market):狙える実質的な市場規模
SAMは、TAMの中でも「自社のプロダクト特性・地域・ターゲットから見て、現実的に狙える市場」のことです。ビジネスモデルや提供手段により、SAMは大きく変わります。
■例:D2Cモデルで国内女性20〜40代に特化して販売している場合、その層に該当するスキンケア市場がSAM
SOM(Serviceable Obtainable Market):実際に獲得可能な市場規模
SOMは、SAMの中でも「自社の現状のリソース・チャネル・認知状況を踏まえ、短中期で実際に取れるシェア」を意味します。
現実的なシェア見込みを示すため、ピッチ資料や戦略資料で最も重要視されることもあります。
■例:年間のマーケティング予算で獲得できるリーチをもとに、20万人市場のうち2万人(10%)を想定するなど
3つの違いを図で解説(ピラミッド構造)
視覚的に理解するには、以下のような同心円やピラミッド図が効果的です。
-1-e1755830384545.jpeg)
■SAM:狙えるターゲット市場
■SOM:実際に取れる市場
このように、「大は小を含む」関係であることを理解することが、正確な戦略立案の第一歩となります。
なぜTAM・SAM・SOMが重要なのか?
TAM・SAM・SOMは単なるマーケティング用語ではありません。
市場の可能性・現実性・戦略性を明確に伝えるフレームとして、多くの企業や投資家から重視されています。

スタートアップ・新規事業の成長可能性を説明するため
新規ビジネスでは、「どのくらいの成長余地があるのか?」が投資判断の鍵です。
TAM・SAM・SOMを活用すれば、夢と現実の両面を可視化できます。
・ SAM:事業戦略の射程範囲(中期的な到達点)
・ SOM:足元の収益計画(短期的な現実ライン)
この構造は、成長シナリオをロジカルに描くために最適です。
VC/投資家からの信頼を得るピッチ資料の定番構成
投資家にとって重要なのは「このビジネスは拡張性があるか?」と「いま何%の市場を取りにいくのか?」の両方です。
TAM・SAM・SOMは、その問いに一貫性を持って答えるための必須パートとして、多くのピッチデッキに組み込まれています。
・ プロダクトの市場適合度(PMF)を検証する材料にもなる
市場性・収益性・戦略性を可視化するための指標として
既存事業においても、以下のような意思決定にTAM・SAM・SOMは活用されています。

・ カテゴリ拡張におけるリスクとリターンの比較
・ 戦略リソースの投下先判断(どこに集中すべきか)
つまり、TAM・SAM・SOMは「やるべきこと」と「やらないこと」を切り分ける戦略的思考の土台でもあるのです。
■あわせて読む
ブランディングを高めるには?想起され選ばれるブランドを築く4つの戦略ステップ
ブランドを立ち上げる方法とは?成功するためのステップと失敗しないためのコツ
TAM・SAM・SOMの調べ方・算出方法

TAM・SAM・SOMを正しく理解しても、調べ方や数値化の方法が曖昧では実務に活かせません。
以下では、信頼性のある市場規模を見積もるための具体的なアプローチを紹介します。
リサーチ方法①:公開市場データ・業界レポートの活用
まず有効なのが、公的機関や調査会社の発行するレポートです。
以下のような情報源から、業界全体の市場規模(TAM)やカテゴリ別市場(SAM)を導き出せます。
・ 富士経済、矢野経済研究所、Statistaなどの民間調査レポート
・ Amazon広告やGoogleレポートなど、チャネル別の需要データ
数値の正確性・出典明示が担保されるため、投資家・社内の納得度も高まります。
リサーチ方法②:ペルソナ設計からのボトムアップ算出
トップダウン(市場全体から)とは逆に、自社のターゲット像(ペルソナ)を起点に市場を積み上げる方法もあります。
・ ターゲットは「都市部に住む30代共働き女性」約500万人
・ そのうちスキンケアに月3,000円以上使う人が30%(150万人)
・ 自社がSNS広告で届く範囲は約15万人 → これがSOM
このように、Who(誰に)を明確にした上で市場を計算すると、より納得感のあるSOM設計が可能になります。
参考にしたい統計データ・国内外の情報源
以下のサイトは、TAM・SAM・SOMの算出に活用しやすい定番情報源です。
・ 総務省「通信利用動向調査」
・ 経産省「電子商取引に関する市場調査」
・ Statista(英語):海外の市場規模推定
・ AppAnnie、SimilarWebなどのWeb行動データ
出典を明記し、最新の数値を活用することが、資料の信頼性と戦略設計の精度を高めるポイントです。
【ブランディング・マーケティングに関するご相談・お問い合わせはこちら】
TAM・SAM・SOMの活用事例(Oz link支援例)
弊社Oz link(株式会社オズ・リンク)では、新規事業やスタートアップの戦略設計において、TAM・SAM・SOMの整理を起点とした支援を行っています。
以下は実際の支援例です。
D2Cブランドの事業計画における市場規模設計支援

敏感肌向けスキンケアブランド「VINTORTE」の戦略整理において、Oz linkはTAM・SAM・SOMの設計から支援を実施。
・ SAM:30〜40代女性・敏感肌志向層(約2,000億円)
・ SOM:SNS広告とオウンドECで獲得可能な初年度ユーザー:1万人規模(売上見込:約1.2億円)
この分析を元に、商品訴求軸、広告チャネル、LPコンテンツを一貫設計し、ターゲットに届くブランド構造を可視化しました。
よくある誤解と注意点
TAM・SAM・SOMの構造はシンプルですが、使い方を誤ると、逆に説得力を損なうリスクもあります。
実務でありがちな失敗や、注意すべきポイントを解説します。
TAMだけが大きくても意味がない?戦略設計の落とし穴
多くの資料で「市場全体は数兆円」といった大きなTAMが語られますが、それだけでは収益の現実性は見えません。重要なのは、SAM・SOMとのバランスです。
この両方が揃っていなければ、「期待だけ大きい、実現性が低い」ビジネスに見えてしまう危険性があります。
SAMとSOMを過小評価してしまうリスク
一方で、保守的に見積もりすぎると、ビジネスのスケール可能性が伝わらないこともあります。
特に社内意思決定や初期ピッチでは、現実的すぎて夢がない印象になるケースも。
・ SAMが狭すぎて「中長期の展開」が見えない
現実感は大切ですが、「説得性+拡張性」のバランスがポイントとなります。
数字の裏付けがないと信頼されない(出典・根拠の重要性)
市場規模を提示する際に、根拠のある数字や信頼できる出典がないと、一気に信頼性が下がるリスクがあります。
・ 出典元が古すぎる、海外の曖昧な記事に依存していないか
市場規模の数字は、戦略の前提となるため、一次情報や権威あるレポートに基づいた設計が必要です。
まとめ|TAM・SAM・SOMを正しく使えば市場の可能性を「伝えられる」

TAM・SAM・SOMは、事業の市場性を三層構造で示す強力なフレームワークです。
大きな市場(TAM)を描きながら、どこを狙い、どこまで獲得できるのか(SAM・SOM)を分けて整理することで、事業の「夢」と「現実」を両立して伝えることが可能になります。
この構造を理解していないと、以下のようなリスクが生まれます。
・ 逆に小さすぎてスケールしないと判断される
・ 数字の出典が曖昧で説得力を欠く
重要なのは、数字をただ並べることではなく、「なぜその数字なのか」を説明できるかどうかです。
Oz linkでは、TAM・SAM・SOMの設計はもちろん、ペルソナ設計・戦略構築・ピッチ資料化・社内承認用ドキュメントの作成支援までを一気通貫でサポートしています。
新規事業を立ち上げたい方、事業計画に説得力を持たせたい方、投資家や上層部を納得させる資料を作りたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
■あわせて読む
【2026年版】ブランディング会社ならOz link|競争優位性を確立するための最適支援
【2026年版】デジタルマーケティングコンサルならOz link|戦略設計から実行・改善まで一気通貫で支援
『ブランドコンサルティングとは?企業のブランド価値を最大化するための戦略とアプローチ』
『ブランディングの意味とは?成功するブランド戦略の立ち上げ方と重要性』
『ブランディング分析の方法|手法・活用シーン・戦略設計への活かし方を徹底解説』
『マーケティング方法を戦略から施策まで体系的に解説|成果を出すための実践プロセスとは?』
『ブランディング戦略のフレームワーク|成功するブランドのための必須ツール』
『【保存版】マーケティング戦略フレームワーク12選|STP・4P・SWOTを実務で使いこなす方法』
『【完全ガイド】マーケティング戦略の立案方法|フレームワークと4ステップ設計術』
『マーケティング戦略コンサルとは?依頼前に知っておきたい基礎知識』
『マーケティングプロセスを理解すれば売れる仕組みがつくれる|全体設計ガイド』
About me
この記事を書いた人
Oz link 編集部
デジタル戦略を中心にクライアントを成功へ導くマーケティングコンサルティングエージェンシー株式会社Oz link(オズ・リンク)。顧客起点の科学的マーケティングを一気通貫で支援することで、企業の持続的な成長を実現します。ブランディングやマーケティング全般、プロモーションや営業活動における課題解決をサポートします。まずはお気軽にご相談ください。
> ご相談・お問い合わせはこちら> Oz link Group執行役員CMOのX