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【図解】戦略的な採用活動を実現するためのフレームワーク6選|成果につながる設計手法を解説
企業の採用活動において、「戦略を立てる」と一言でいっても、何から着手すべきかわからず、感覚的な運用に陥っているケースは少なくありません。
そこで鍵となるのが、「採用戦略をフレームワークで設計する」という考え方です。
ターゲットの明確化から、自社の魅力の言語化、接点ごとの設計までを体系立てることで、誰が担当しても成果につながる「再現性のある採用」が実現できます。
本記事では、採用戦略における代表的なフレームワーク6つを紹介するとともに、実際の導入ステップと活用方法をわかりやすく解説します。
属人的な採用から脱却し、組織の成長につながる採用戦略を構築したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
Contents
採用戦略にフレームワークが必要な理由
採用活動において成果を上げ続けるためには、戦略を属人的な感覚や経験に頼らず、フレームワークで設計・運用することが不可欠です。
採用は「人手を埋める作業」ではなく経営戦略である
採用とは、単なる人員補充ではありません。どれほど優れた経営戦略があっても、それを実行できる人材がいなければ成果は実現できません。
とくに新卒採用は、企業理念や将来像を語る数少ないチャンスでもあり、理念浸透・ブランディングの観点からも経営と密接に結びついた活動といえます。
フレームワークがない採用は属人化・場当たり化する
中小・ベンチャー企業では、「とりあえず媒体に掲載」「インターンをやってみる」といった施策先行型の採用も多く見られます。
しかし、これでは施策ごとの目的や評価軸が定まらず、担当者の異動や退職でノウハウが途切れてしまうことも少なくありません。
フレームワーク導入の3つのメリット
採用戦略をフレームで設計することにより、以下のような効果が期待できます。
■一貫性のある採用コミュニケーションが可能になる
→誰に、何を、どの順序で伝えるかが明確になり、施策の意図や効果がブレなくなる
■チームでの再現が可能になる
→異なる担当者間でも共通言語として活用でき、継続的な改善と蓄積が進む
■採用KPIや歩留まりの改善が見込める
→フェーズごとの指標設定が可能になり、PDCAを回す基盤が整う
このように、戦略の「型」があることで、採用活動全体を経営と接続させながら持続的に改善していくことが可能になります。
代表的な採用戦略のフレームワーク6選
採用活動を戦略的に進めるうえで、フレームワークの活用は非常に有効です。
以下では、6つの代表的なフレームワークについて、それぞれの目的と実践イメージを解説します。
1. ペルソナ分析|人物像の具体化
ペルソナ分析とは、「どのような人材を採用すべきか」を具体的に言語化する手法です。弊社Oz link(株式会社オズ・リンク)では以下の4つの視点から人物像を設計しています。
人物像 | 内容 | 例 |
---|---|---|
スタンス | 仕事への向き合い方 | 失敗を恐れず挑戦する |
ポータブルスキル | 課題解決力・対人スキル | 巻き込み力、論理的思考力 |
テクニカルスキル | 職種に求められる実務的スキル | ライティング力、マーケティング知識 |
リテラシー | ITや言語の基礎的な理解力 | Google・Office系ツールの活用力 |
たとえば、「事業責任者候補になりうるポテンシャル層」をターゲットとする場合、リーダー経験があり、裁量の大きさを望む求職者像が設計されます。これにより、メッセージや選考設計の軸が明確になります。
2. カスタマージャーニー|接点ごとの情報設計
カスタマージャーニーは、求職者が企業と出会い、情報に触れ、最終的に入社を決めるまでのプロセスを可視化する手法です。接触のフェーズごとに最適な情報を設計することで、段階的に志望度を高めることができます。
接触フェーズ | 求職者に伝えるべき情報の一例 |
---|---|
インターン | 社員の魅力やカルチャー |
会社説明会 | キャリアパス、働き方、裁量権の大きさ |
面談 | 個別のフィードバック、将来的な期待 |
最終面接 | 経営者の想いや企業の将来像 |
このように、接点の性質に応じた情報設計を行うことで、納得感を持った意思決定を促進します。
3. 3C分析|採用環境のポジショニング分析
3C分析は、「Company(自社)」「Competitor(競合)」「Candidate(求職者)」の3軸から採用環境を整理し、自社のポジションと訴求軸を明確にするためのフレームワークです。
3C | 内容 | 例 |
---|---|---|
Company(自社) | 自社が持つ採用の特徴や強み | 経営層との距離が近く、若手でも裁量を持てる |
Competitor(競合) | 同業他社の採用戦略や訴求軸 | 大手企業が安定性や福利厚生を訴求 |
Candidate(求職者) | 求職者が重視する価値観や期待 | 成長機会・挑戦環境・自己裁量に魅力を感じる |
このような構図が見えたとき、「安定性」で戦わず、「挑戦環境」を軸に訴求することで差別化を図ることができます。
4. 4P分析|自社の魅力を整理する
採用における「4P分析」は、マーケティングの考え方を応用し、求職者が企業を選ぶ際に重視する4つの要素を整理するフレームワークです。
どのような軸で訴求するかを構造的に捉えることで、採用コミュニケーションの一貫性が生まれ、求職者の志望度を高めることができます。
4P | 内容 | 例 |
---|---|---|
Philosophy(理念・ビジョン) | 組織の存在意義や価値観 | 「挑戦を応援する文化」「持続可能な社会への貢献」など |
Profession(職務内容・専門性) | 実際に携わる業務や成長領域 | 「裁量を持って施策を設計」「新規事業の立ち上げ」など |
People(人材像・組織) | 社員の魅力や組織カルチャー | 「フラットで議論が活発」「多様なバックグラウンド」など |
Privilege(待遇・環境) | 働く環境や報酬・制度面の魅力 | 「在宅勤務OK」「住宅手当あり」「研修制度が充実」など |
この分析をもとに、説明会や募集ページ、面接でのメッセージ内容を整理することで、求職者が感じる魅力をより明確に伝えることが可能になります。どの要素をどのタイミングで伝えるかを戦略的に設計することで、採用活動全体の質が高まります。
5. SWOT分析|採用戦略の現状把握
SWOT分析は、「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」を整理し、現状の採用戦略を棚卸しするフレームワークです。
SWOT | 内容 | 例 |
---|---|---|
Strength(強み) | 自社が誇れる要素 | 理念が社員に浸透しており、行動に現れている |
Weakness(弱み) | ボトルネックとなっている点 | 知名度が低く、エントリー数が少ない |
Opportunity(機会) | 外部環境で追い風となっていること | 成長環境を求める学生が増えている |
Threat(脅威) | 外部からの障壁や競争要因 | 大手企業が採用ブランディングを強化している |
こうした分析をもとに、「まず強みをどう伝えるか」「弱みをどう補うか」の優先順位が整理され、施策の打ち手が具体化します。
6. TMP(Talent Management Pyramid)|採用から定着・活躍までの一貫設計
TMPは「採用」「育成」「定着」「活躍」の4階層で構成されたピラミッド型の設計図であり、採用活動を点ではなく、人材戦略全体の一部として設計するためのフレームワークです。
例)
■入社後1年目は現場でのOJT
■2年目にチームマネジメント経験
■3年目以降に新規事業に挑戦
たとえば、「ブランド責任者候補を新卒で採用したい」場合、上記のような育成ロードマップと採用要件をセットで設計します。
採用が「採って終わり」ではなく、「未来をつくるプロセス」へと変化します。
【人材採用に関するご相談・お問い合わせはこちら】
■あわせて読む
『採用ターゲットの決め方3ステップ|意味・メリット・注意点を解説』
『採用マーケティングとは?ターゲット設計から施策・実行まで戦略的に進める5つのステップ』
採用戦略フレームワーク導入の5ステップ
採用戦略は、設計から実行までを一貫して構造化することで、再現性と成果のある採用活動が実現されます。
以下では、弊社Oz link(株式会社オズ・リンク)が実際に提供している支援プロセスをもとに、採用戦略構築の流れを5つのステップに整理し、それぞれのフェーズで活用されるフレームワークや設計項目を紹介します。
【STEP1】人物像
採用の起点は、どのような人材を採用すべきかを明確にすることから始まります。
スキルや経験だけでなく、価値観や志向性といった要素まで含めて、求める人物像を具体化します。
■主な業務内容
・求める人物像の言語化
・組織や事業との親和性の定義
・人材要件の整理(職種 ✕採用目標数✕学校✕志向性タイプ✕競合企業イメージ )
■活用するフレームワーク
・ペルソナ分析 :ターゲットとなる求職者像を可視化し、価値観・意思決定軸・行動傾向を具体化
【STEP2】バリュープロポジション
求職者から見て「なぜその企業で働く意味があるのか」を明確にする工程です。競合との差別化ポイントや、ターゲットに響く訴求軸を整理し、採用の方向性を決定します。
■主な業務内容
・市場における自社の立ち位置の把握
・ターゲットにとっての訴求軸の特定
・差別化ポイントの明文化
■活用するフレームワーク
・4P分析 :Philosophy / Profession / People / Privilege の観点から訴求要素を整理
【STEP3】ジャーニーマップ
求職者が企業に興味を持ち、志望度を高めていくプロセス全体を設計します。認知〜内定承諾までの流れの中で、どのタイミングで何を伝えるべきかをストーリーとして設計します。
■主な業務内容
・志望度が高まるまでの情報接点の可視化
・各接点での訴求内容の設計
・情報提供と感情変化の整合性の整理
■活用するフレームワーク
・カスタマージャーニーマップ :行動・感情・情報接点・訴求内容をマッピング
【STEP4】コンテンツ
ペルソナ・バリュープロポジション・ジャーニーで定義した内容に基づき、必要なアウトプットやコミュニケーションコンテンツを設計します。
■主な業務内容
・採用サイトの設計
・会社説明会・インターンコンテンツの企画
・選考中のコンテンツ設計(フィードバック文・連絡文面など)
【STEP5】プロセス設計
設計した戦略は、実行して終わりではなく、継続的に見直し・改善していく体制の構築が不可欠です。
採用活動は環境変化や競合動向に強く影響されるため、柔軟かつ迅速な対応が成果に直結します。
■主な業務内容
・選考フロー・接点設計の見直し
・志望度や歩留まりの定期モニタリング
・定例ミーティングによる進捗確認・課題共有
FAQ|よくある質問
Q1. どのフレームワークから導入すれば良いですか?
A. 初めての方には「ペルソナ分析」から始めるのがおすすめです。
求める人物像を言語化することで、面接官の評価基準や訴求ポイントが明確になります。次にジャーニーマップや4P分析を使うことで、求職者目線での情報設計がしやすくなります。
Q2. フレームワークはいつ更新すればいいですか?
A. 採用市場の変化や社内の事業フェーズによって、求める人物像や訴求内容は変わるものです。
少なくとも 年1回の見直しを推奨しています。特に、インターンシップや内定者フォローを実施する前など、節目ごとのタイミングでの更新が効果的です。
まとめ|採用活動にフレームワークを取り入れ、戦略的に設計することの重要性
新卒採用において成果を上げるためには、単発の施策や感覚的な運用ではなく、 全体設計に基づいた戦略的なアプローチ が欠かせません。その中で、フレームワークの活用は、思考の整理や施策の一貫性を担保するうえで非常に有効な手段となります。
本記事で紹介したように、「ペルソナ分析」「カスタマージャーニー」「3C分析」「4P分析」「SWOT分析」「TMP」といったフレームワークを、採用戦略の各フェーズで適切に活用することで、 求職者の志望度を高める設計 や、 再現性ある組織的な採用活動 が実現可能になります。
また、フレームワークを単なるツールとしてではなく、関係者との共通言語として運用することで、社内の巻き込みやナレッジの蓄積にもつながります。
採用フレームワークを“形だけ”で終わらせないために
「ペルソナやジャーニーは作ったけれど、実行に活かせていない」「ペルソナ分析や4P分析をやってはみたが、戦略につながっていない」――そんなお悩みをよく伺います。
採用フレームワークは、 設計して終わりではなく、“現場で活用できる状態”に落とし込むことが重要 です。
弊社Oz linkでは、企業ごとの目指す姿にあわせて、フレームワークを活用した戦略設計から施策実行までを一気通貫で支援しています。ご相談は無料ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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『新卒採用のメリットとは?企業が今こそ取り組むべき理由と成功のポイント』
『採用ブランディングとは?企業の魅力で人材を惹きつける戦略と成功のポイント』
『2027年卒に向けた新卒採用トレンドとは?企業が押さえるべき最新動向と実践ポイント』
『新卒採用の単価とは?費用相場とコスト削減の考え方を解説』
『中小企業の採用成功のポイントとは?限られたリソースで理想の人材を確保する方法』
『新卒採用の広告戦略とは?応募につながる伝え方と採用までの流れを解説』
『採用ターゲットの決め方3ステップ|意味・メリット・注意点を解説』
『【2025年版】デジタルマーケティングコンサルならOz link|戦略設計から実行・改善まで一気通貫で支援』
『成果につながる採用ノウハウとは?マーケティング視点で徹底解説』
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この記事を書いた人
Oz link 編集部
デジタル戦略を中心にクライアントを成功へ導くマーケティングコンサルティングエージェンシー株式会社Oz link(オズ・リンク)。顧客起点の科学的マーケティングを一気通貫で支援することで、企業の持続的な成長を実現します。ブランディングやマーケティング全般、プロモーションや営業活動における課題解決をサポートします。まずはお気軽にご相談ください。
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